犬のしつけ
4.犬の問題行動と対処法
問題行動とは、飼い主にとって好ましくない犬の行動を指します。中には「吠える」「かじる」など犬にとってはごく正常な行動でありながら、人間社会では歓迎されないものも含まれます。頭ごなしに禁止するのではなく、なぜそのような行動をとるのか原因を探りましょう。原因が分かったら、やめさせるための対処法を試していきます。
なお、病気が原因のトイレの粗相や外傷が痛くて咬み付くといった行動は、飼い主のしつけよりも病院での治療が先決です。
問題行動に対処するための5ヵ条
1.早いうちに対処する・・・トレーニングと同じで、物覚えがいい脇内に対処しましょう。長年の習慣と化した行動はなかなか変えられません。
2.家族全員で協力する・・・問題行動を取った時は、毎回同じように対処をします。対処したりしなかったりとバラツキがあったり、人によって方法が違うと犬は混乱します。
3.犬の性格を熟知する・・・犬の性格によって、問題行動の原因が分かることがあります。
4.あせらずにじっくり取り組む・・・根気よく繰り返しましょう。犬の習性に基づいた行動や、長年続けてきた行動は簡単には変えられません。
5.改善されなければ、方法を見直す・・・しばらく続けても変化が見られなければ、やり方を変えましょう。
吠える
吠えること自体は、犬の習性です。より激しく吠えるように改良された犬種もあるくらいです。しかし、飼い主が望まない時に吠えるのは「無駄吠え」となります。吠える時は、どんなときに吠えるのかを知り、ケースごとに対処法を考えましょう。吠え方からも意味を知ることができます。
・「ワンワン」と連続して吠える・・・自分に注目して欲しい時
・「キャンキャン」と悲鳴をあげる・・・怖がっている時、興奮している時
・「ウーッ」と唸る・・・威嚇する時、警告する時
・「クンクン」と鼻を鳴らす・・・心細い時、服従を表す時
・「ワオーン」と遠吠えをする・・・遠くにいる誰かに自分の居場所を知らせる時、他の犬の遠吠えに返事する時、パトカーなどのサイレンに反応する時
警戒して吠えている場合と、何かを要求して吠えている場合はやめさせます。
[ケース1 人に吠える]
初対面の人に向かって吠える時は、警戒して吠えていると考えられます。子犬の時の社会化が不十分で、人に慣れていない犬によく見られます。
1.見知らぬ人が近づいてきたら、「おすわり」「まて」をさせる。
2.その人が通り過ぎるのを待ちましょう。おとなしくしていれば、ほめます。
この他にも、協力者を見つけ、その人からごほうびをもらうことで人嫌いを克服する方法があります。その際、犬を警戒させないために、人と同じ高さになるように体をかがめ、下から手を出します。目はあわさないようにします。
[ケース2 他の犬に吠える]
人に吠える場合と同じように、他の犬に会ったら、「おすわり」「まて」をさせます。アイコンタクトで飼い主に注意を引き付け、落ち着かせます。そのまま飼い主は自分の犬と他の犬の間に立ち、他の犬が通り過ぎるのを待ちます。吠えずにおとなしくしていたら、ほめます。
[ケース3 お客さんに吠える]
来客があった時に吠える犬は、自分のテリトリーが犯されてと思っていることがあります。お客さんが部屋に入ってくる前にハウスに入れましょう。お客さんが協力してくれるようであれば、フードなどのごほうびを犬にあげてもらいます。犬が吠えずに食べたら、ほめましょう。
[ケース4 要求から吠える]
遊んで欲しい、かまって欲しい、散歩に行きたい、フードを食べたいなどさまざまな要求から吠える犬がいます。こんな時は無視を通しましょう。うるさいからといって要求に応えると、吠え続ければ応えてもらえると誤解します。声をかける場合は、完全に吠えるのをやめてからにしましょう。
咬む、かじる
吠えることと同様に、人や他の犬、あるいはものを咬んだりかじったりするのは犬の習性です。
あま咬みといって、人や他の犬に相手にしてもらいたくて、咬む事があります。じゃれながら浅く咬む場合と、不満があって咬む場合があります。子犬のあま咬みは、早いうちに対処しましょう。
一方、本気で咬みつく時は、恐怖心や警戒心の表れです。体を触られたりして恐怖心を感じている時や、自分のテリトリーが荒らされていると感じた時に、その原因を作っている相手に咬みつきます。飼い主に咬みつく場合は、服従心がきちんと養われていないと考えられます。
ものをかじったり、咬んだりして飼い主が困る時は、咬むこと自体をやめさせるのではなく、犬用のゴムのおもちゃなど、別の咬んでも良いものを代わりに与えます。
対処法
・かじられたくないものは、犬の目の届くところに置かない
・かじられたくないものに、犬の嫌いなニオイや味がするスプレーをかける
・子犬のあま咬みの相手をしない
・手を咬む犬に対しては、手に嫌いなニオイを付ける
咬んでいるものを急に取り上げないようにしましょう。犬は対抗心を燃やして食らいついてきます。
トイレ以外で粗相する
性格や育て方によって、なかなかトイレで排泄しない犬もいます。できるようになるまで、根気よくしつけを続けましょう。失敗しても決して叱ってはいけません。特に粗相した直後に叱ると、排泄自体が悪いことだと思い、オシッコを我慢してしまいます。また、失敗した時に飼い主が騒ぐと、犬は自分にかまってくれているのだと解釈し、かまってもらうために粗相するようになります。黙って掃除をしましょう。
次に。トイレ自体に問題がないかを確認します。
チェックポイント
・トイレに連れて行くタイミングは合っていますか?・・・成長するにつれて、犬の1日あたりの排泄回数は減っていきます。いつまでも幼犬の頃と同じタイミングでトイレに連れて行っても、排泄できません。
・トイレは清潔ですか?・・・汚れたシートがいつまでもあったら、別の場所で排泄してしまいます。
・トイレのサイズは適切ですか?・・・トイレが小さすぎると排泄しづらいようです。身動きのできない大きさでは排泄しづらいです。
[注意]
トイレのしつけが済んでいる犬が、急にトイレ以外のところで排泄するようになったら、健康上の問題も疑いましょう。
また、飼い主のことが大好きな犬は、帰宅した時などにあまりのうれしさのために、オシッコをもらしてしまうことがあります。これを防ぐには、トイレに行った時にオシッコを全部出し切る習慣をつけさせましょう。
動くものを追いかける
猟犬の血を引く犬によく見られる行動ですが、散歩中に走っている自転車やバイクを追いかけようとすることがあります。また、他の動物やボールなどを見つけて追いかけることもあります。これらは狩猟本能に基づいた行動なので、完全にやめさせるのは困難です。飼い主が常に注意し、事故につながるような状況を避ける他ありません。また、散歩中はリードを短く持つ習慣をつけましょう。
対処法
1.自転車などを見つけて走り出そうとしたら、「おすわり」「まて」をさせます。
2.対象が遠ざかった後、犬が落ち着いていたらほめてごほうびをあげます。
何度も繰り返し、練習する必要があります。協力者を見つけて自転車などで何度も通り過ぎてもらうと良いでしょう。
落ちているものを食べる
散歩中などに、犬が地面に落ちているものを口に入れてしまうことがあります。犬の健康に良くないのでやめさせましょう。
犬が落ちているものに気を取られるのは、散歩に集中していないからだと考えられます。飼い主が先に地面に落ちているものを見つけたら、以下の対処法をとります。
対処法
1.声をかけて飼い主に注目させます。
2.注目させたまま、通り過ぎます。拾い食いをしなかったら、ほめます。
落ちているものを、投げたり蹴飛ばしたりしないようにしましょう。犬は追いかけようとします。
リードを引っ張る
散歩中に、犬が飼い主を引っ張る状況はよくありません。犬は自分がリーダーだと勘違いしており、このまま放っておくと主従関係が崩れてしまいます。また、ケガや事故の原因にもなるのですぐに矯正しましょう。
引っ張る理由としては、自分が群れを率いているという認識のほかに、狩猟本能によって何らかの獲物を追跡しているということも考えられます。
普段からリードを短く持つように心がけ、飼い主の前ではなく、横を歩かせましょう。
対処法
1.犬がリードを引っ張ったら、飼い主は立ち止まり、犬が進みたい方向と逆を向きます。
2.そのままじっと動かず、犬があきらめて飼い主のそばに寄ってくるのを待ちます。
リードを無理に引っ張らないようにしましょう。犬も対抗して引っ張ってきます。
人に飛びつく
飼い主が帰宅した時などに、うれしくて飛びついてくることがあります。しかし、犬が人に飛びつくのは、好きな相手に歓迎の気持ちを表したい時だけではありません。相手との力関係を確かめる時に飛びつくことや、相手が自分のテリトリーに侵入するのを防ごうとして飛びつくこともあります。
相手が飼い主であれ、他人であれ、犬を飛びつかせるのは、人と犬両方のケガや事故につながる可能性があり危険です。やめさせましょう。
[ケース1 帰宅した飼い主に飛びつく]
飼い主が迷惑でなければ、やめさせる必要もないと思ってしまいがちですが、一度でも許せば、他の時に言うことを聞かなくなってしまいます。
1.飛びついてきても、かまわず無視し、犬が静かになるのを待ちます。
2.静かになったら「おあすわり」「まて」をさせます。そのままおとなしく待っていれば、ほめます。
飛びついてきたら、決してかまってはいけません。抱っこなどしようものなら犬はますます飼い主にべったりになり、留守番ができなくなってしまいします。
[ケース2 散歩中に通行人に飛びつく]
見知らぬ通行人に飛びつく場合、犬は相手を敵とみなしています。特に、自分がリーダーだと思っている犬の場合は、仲間である飼い主を守ろうとしているつもりかもしれません。
1.通行人の姿を確かめたら、リードを短く持ちます。
2.犬が飛びかかろうとしたら、飼い主が通行人と犬の間に入ります。
3.通行人が通り過ぎるまで、「おすわり」「まて」をさせます。
飛び掛るのは自分を優位と感じているからです。
分離不安
飼い主が外出した時に、極度の不安やストレスを感じ(分離不安)、いつもとは違う行動をとることがあります。これは、留守番のしつけができていない犬や、普段飼い主がかまいすぎるせいで留守番ができなくなっている犬が起こしやすいトラブルで、精神的な病気の1つです。トイレ以外で排泄する、物を壊したりかじったりする、飼い主が帰宅したらオシッコを漏らす、自分の体を舐めたり、咬んだりする、無駄吠えするといった問題行動がよく見られます。
分離不安に大しては、次のような対処法があります。
・外出パターンを覚えさせない・・・着替えや化粧など、外出する時と同じ準備をした後で、そのまま家にいます。出かける準備=留守番という図式をなくします。
・出かける前に犬とたっぷり遊ぶ・・・飼い主が犬と目いっぱい遊んで安心感を抱かせます。激しい運動をさせて、留守番中は寝るぐらいにさせるのが手です。
・飼い主がいる時もハウスに入れておく・・・ひとりにさせる習慣をつけます。
・テレビやラジオをつけっぱなしで家を出る・・・犬と一緒にいる時に、テレビやラジオをつけ、その状態に慣らしてから、飼い主が少しずつ犬の側から離れます。テレビやラジオがついていたら飼い主がいると思わせるのがポイントです。

